〔No1551〕
平成 11年 5月 14日、埼玉県加須警察署司法警察員・荒舩恵治警視は、被疑者・
■■■■他三名に対する傷害致死被疑事件について、本件披害者・飯島友樹の死体を
解剖のうえ、下記事項の鑑定をするよう嘱託(嘱託書番号第 60号)されました。

               鑑  定  事  項

1.死因                   4・血液型
2.損傷の部位程度            5・その他参考事項
3.凶器の種類とその用法
                                             以上
よって同日午後 2時 20分から午後 6時 00分まで、埼玉医科大学法医学教室解剖
室において、■■■■、介助:■■■■、■■■■、記録:■■■■、これを解剖す
るにその所見はつぎのようである。



                   鑑定書

                解 剖 検 査 記 録

1.住 所   埼玉県北埼玉郡■■■■■■■■■■■■■■■■
2.氏 名   飯島 友樹
3.年 齢   15歳
4.職 業   高校生
5.持込署   加須警察署

T 外景検査

1.男性屍  身長 177cm  体重 64kg  体格 やや大  栄養 普通
   全身の皮膚  一般に蒼白
   死斑   はとんど発現していない。
   死体硬直  顎 (++)  頚 (++)  左右有 (++)  左右肘(++)
     左右腕 (++)  左右指 (++)  左右股 (++)  左右膝 (+++)
     左右足 (+++)  左右趾(+++)
   直腸温 30.5℃ (外気温 20℃ 平成 11年 5月 14日 7時 50分現在)

2.頭部   頭皮 一般に蒼白   頭髪毛 12cm内外 黒色毛密生
   損傷の有無 (+)

3.顔面部
   一般に蒼白
   眼 閉
     眼瞼結膜 蒼白 充血(左:++、右:+) 点状出血(−)
     眼球結膜 蒼白 充血(左;++、右:+) 点状出血(一)
     角膜 透明  瞳孔 円形(直径 5mm)  眼球硬度 ほぼ普通
   鼻腔内漏出液(暗赤色血液少量)
   口  閉  口唇粘膜 微紅色  舌尖 上下歯列の後方  口腔粘膜 微紅色
     充血 (+) 点状出血 (一)  口腔内の異物 (食物残渣少量)
   歯  特に異常がない。
   耳  耳介 微紫色   外耳道内異物(−)
   損傷の有無 (+)

4.頚部
   一般に蒼白  死斑 (−)
   損傷の有無 (+)

5.胸腹部
   一般に蒼白  腹部 ほぼ平坦
   損傷の有無 (+)

6.背部
   一般に蒼白  死斑 (±)
   損傷の有無 (+)

7.左右上肢
   一般に蒼白  死斑 (一)
   爪床 蒼白
   損傷の有無 (+)

8.左右下肢
   一般に蒼白  死斑 (−)
   爪床 蒼白
   左右とも第 4趾は第3節以降が短縮している。
   損傷の有無 (+)

9.外陰部
   黒色陰毛
      陰茎、陰のう (特に異状なし)
   損傷の有無 (−)

10.肛門
    閉  周囲の糞便汚染 (−)
    損傷の有無(−)

U 内景検査

11.頭腔を開く
    帽状腱膜下組織  充血 (+)
    側頭筋肉 淡赤褐色
    頭蓋骨 厚さ 7〜3mm   板間層 淡紫赤色   血量 中等
    硬膜  固著 (−)  充血 (+)  出血(−)
    損傷の有無 (+)

12.脳
    大きさ 17×16×10cm  重さ 1590g
    外観  やや腫脹、左右後頭葉、頭頂葉、小脳上面を主として広範囲のくも膜下出血
    側室内髄液  血性:多量
    実資内血点  中等
    軟化などの器質的異常 (−)
    脳底部動脈系  特に異常なし
    損傷の有無 (+)

13.腹腔を開く
    皮下脂肪   臍下部の厚さ 0.5cm  筋肉 出血 (−)
    大綱   遊離端 消化管の前面   脂肪の発育 正常   充血(−)
    腸間膜   脂肪組織の発育 正常  充血(−)  出血 (−)  リンパ節の腫大 (−)
    消化管   容気量 中等   漿膜面 蒼白   充血(−)  出血 (−)
    横隔膜の高さ   左 約第 5肋間   右 約第 5肋骨
    腹腔内液 (−)
    緒臓器の位置関係 (正常)

[1]胸腔臓器

14.胸腔
    開検時  癒着 (−)  胸腔内液 (一)

15.胸腺
    重さ 20g

16.心のう
    微黄色透明液少量   内面 蒼白 滑沢  充血(−)  点状出血 (−)

17.心
    大きさ  ほぼ本屍の手拳大  重さ 350g
    心臓内血液   暗赤色流動性 左房 30ml 右房 70ml 左右室少量 心剔出時 50ml
    心外膜   脂肪組織の発育 (+) 点状出血(−)
    心筋     厚さ 左 1.2cm 右 0.4cm  淡赤褐色  ほぼ湿潤  出血(−)
    心内膜   蒼白 滑沢  出血 (左室に 4×3cm大、斑状)
    房室間孔  左 8cm 右 7cm
    大動脈弁および肺動脈弁の閉鎖官能  ほぼ完全  各弁膜装置肉柱腱索乳頭筋(正常)
    大動脈起始部の巾 6cm   肺動脈起始部の巾 6cm
    冠状動脈系  走行 (ほぼ正常)  内膜(正常)

18.肺
    重さ  左 340g 右 420g
     表面  灰白紫赤色   硬度 海綿様柔軟
     断面  赤褐色   圧出血量 少ない  捻髪音 多い  細小泡沫 中等
      液量  少ない  硬結(−)
    気管支系  暗褐色の粘性内容極めて多量  粘膜 微紫赤色  充血(−)
      点状出血(−)

19.頚部器官
    舌 蒼白   舌根部リンパ節の発育 可良   口蓋扁桃 約小指頭面大
    咽頭 暗褐色粘性内容多量  粘膜 微紫赤色  充血(−) 点状出血(−)
    食道 暗褐色粘性内容少量  粘膜 乳白色  充血(−) 点状出血(−)
    喉頭および気管 胃内容と思われる暗褐色粘性内容多量  粘膜 乳白色ないし淡
       紫赤色  充血(++) 点状出血(−)  
     舌骨および喉頭の諸軟骨の骨折(−) 頚部軟部組織の出血(−)

[2]腹腔臓器

20.肝臓
    大きさ 24×16×6cm  重さ 1100g
    表面 暗赤褐色   硬度 弾力性柔靭
    断面 赤褐色   血量 少ない   小葉の像 明らか
    胆のう内 黄褐色胆汁少量   結石 (−)

21.膵
    大きさ 12×8×2cm   重さ 100g
    特に異常がない。

22.脾
    大きさ 12×8×2cm  重さ 100g 
    表面 紫赤色   皺襞 中等   硬度 軟
    断面 表面とほぼ同色   血量 少ない  脾材および濾胞の像 明らか

23.腎
    大きさ 左 11×7×2.5cm 右 12×5.5×3cm  重さ 左 130g
       右 140g   被膜剥離 容易
    表面 赤褐色   硬度 弾力性柔靭   右腎洞内にやや厚層の出血
    断面 暗赤褐色  血量 少ない   皮髄両資の境界 明らか  髄質はうっ血状
       両質の容積関係 ほぼ正常
    腎孟  粘膜 蒼白  充血(−)  点状出血(右のみ小豆大1個、粟粒大以下中等数)

24.副腎 
     重さ 左9.4g 右6g
     時に異常がない。

25.膀胱 
     尿 微黄色透明尿40ml  粘膜 蒼白   皺襞 やや富む   充血(+)
       点状出血(−)

26.胃
    著しく膨隆
     内容 暗褐色混濁液 650ml (未消化の米飯粒、肉片、麺片、緑色莱片、ジャ  
       ガイモ片等から成る) 粘膜 蒼白   皺襞 乏しい  充血(−)
       点状出血(−) 潰瘍(−)

27.十二指腸
     内容 微黄褐色粘稠液中等量  粘膜 蒼白  充血〈−)  点状出血(−)
       潰瘍(−)

28.小腸
     内容  上部 暗褐色粘稠液多量  中部 黄褐色粘稠液少量  下部 黄褐色
       粘稠液少量   粘膜 乳白色  充血(−)  点状出血(−)
       下部リンパ装置の発育 可良

29.大腸
     内容 黄褐色軟便多量  粘膜 蒼白  充血(−)  点状出血(−)

30.大動脈
     腔内 暗赤色流動性血液少量
     内膜 微黄色 平滑 滑沢  巾 3.5〜3cm

V 緒 検 査

31.血液型検査  A・DccEE型である。


                 説    明

1.死因について
    本屍には死因となり得るような器質的病変はない。
   一方、本屍の顔面・背部を主として、次項記載のように創傷群が多数散在し、
  頭部の創傷によって外傷性くも膜下出血が生じている。このくも膜下出血量は、
  直ちに死亡するような量ではないが、本件では脳腫脹を出現しており、本屍をし
  て意識障害を起こす程度のものであったことは間違いなく、それに伴う二次的全
  身状態の低下があったことも確かである。また、背部を主とする打撲傷群によっ
  て生じた出血は、その全量を総計すると1000 mlを越えていると考えられ、こ
  の結果、本屍をして出血性ショックを起こしたことは確かである。
   本屍に出血性ショックが生じていたことは、心剔出時の血量の少ないことや心
  内膜の出血など心送血流量の減少などの死体所見があることでも確かめられる。
   なお、本屍の気道内に吐物と思われるものが多量吸引されているが、この現象
  はくも膜下出血時やショック時の随伴症状としての嘔吐によるものであり、直接
  的な死因ではない。

   以上を総括すると、本屍の死因は外傷性くも膜下出血と出血性ショックが共合
   したものと判定される。
   そして、その原因は頭部打撲と背部打撲である。

2.創傷の部位、程度について
A・頭部、顔面および頚部の創傷

(1)後頭部中央、外後頭結節の上方 9cmのところを中心として、左右経 9cm、上下
   経 4cm大の斑状皮膚変色(紫赤色)1個
   同部の処々で 0.5×0.5 cm大以下の極めて軽い表皮剥脱が散在している。
   この部の皮下および帽状腱膜下にやや簿層の出血がみられるが骨折はない。

(2)後頭部左側下端、外後頭結節の左方 6cmのところに、1×0.6 cm大の中央部は
   真皮に達する表皮剥脱 1個
   表皮の剥離片は上方に弁状に付着している。
   この部の皮膚にほとんど出血がない。

(3)後頚部中央やや左側寄りに、左側端は半円状、右側端は不明瞭であるが、やや
   線状の放物円的皮膚変色(淡紫褐色)1個
   この部の皮下に簿層の出血がみられる。

(4)後頚部中央から右方にかけて、1.2×0.3 cm大以下の淡赤褐色表皮剥脱 3個
  同部にほとんど出血がない。

(5)左側頭部、左耳介頂の上方 6cmのところを中心として、前後経 4cm、上下経 3cm
  大の範囲に、0.3×0.1 cm大以下の小表皮剥脱群 1個
  同部の頭皮はわずかに斑状に変色(微紫赤色)している。
  この部の皮膚・皮下にやや薄層の出血がみられる。

(6)左耳介背面全面に、0.7×0.5 cm大以下の皮膚変色 ( 紫赤色ないし淡紫赤色 )
   1個および 0.3×0.1cm大以下の小表皮剥脱群 1個
   この部の皮下にやや薄層の出血がみられる。

(7)前頭部から前額部にかけて、左右経 11cm、上下経 10cm大の範囲に、斑状の
  皮膚変色(淡紫赤色)、および 2×1.7cm大以下の主として左上方に走る表皮剥
  脱(赤褐色)群 1個
  この部の皮膚・皮下に極めて薄層の出血がみられる。

(8)左頬部 ( 一部は前額から左眼を含む ) に上下経 12cm、前後経 2〜5cm大の中
  央は面状、周辺部は線状で、とくに中央部ではやや深部に達する 4cm長以下の線
  状のものを含む表皮剥脱群 1個
  同部の下端部は、皮膚変色 (微紫青色) となっており、左眼周囲はブラックア
    イを呈し、やや腫脹している。
  この部の皮膚・皮下にやや厚層の出血がみられる。

(9)左下顎縁に 9×2.5cm大の皮膚変色 (淡紫赤色で、一部に 1cm長以下の線状表
  皮剥脱を伴う) 1個
  この部の皮下にほぼ同大、やや厚層の、出血がみられる。

(10)右コメカミ部から同耳介付着部、同頬骨から下顎部にかけて、4×1cm大以下
  の、あまり生活反応のない表皮剥脱(淡褐色)群 1個

(11)頭蓋内損傷
  頭頂葉から後頭葉にかけて、および小脳上面に広範囲のくも膜下出血
  挫傷はなく、主とし橋静脈の破綻からのものである。

B.背部および上肢背側の創傷

(12)背部ほぼ全体 (含む腰部 ) および左右上腕背側にかけて、上下経 41cm、左右
   経 37cm (上端部 )〜17cm (下端部 ) 大の範囲に、次の創傷群がみられる。

  i)上背部左側に左右経 11cm、上下経 13cm大の線状のものが重複して生じ
   たと思われる斑状 (内部に左肩甲に向かう 2cmの蒼白帯を有する 9cm長の二
   重粂痕様皮膚変色、左下方に向かう巾 2cm程度の蒼白を有する 5cm程度の二
   重粂痕様皮膚変色を伴う) 皮膚変色群 1個

  ii)上背部右側に巾 2cm程度の蒼白帯を有する左右経 12cm、および 13cm大
   の二重粂痕様皮膚変色2粂がほぼ水平に 5cmの間隔を置いてみられる。
   なお、上方の右端部には 1.3×0.5cm大の小表皮剥脱 1個を伴っている。

  iii)i)からii)の下端にかけて、右下方または左下方にやや斜めに走る左右
   経 25cm大の大部分は二重粂痕様である皮膚変色 (蒼白部の巾は 2cm程度)、
   右端部の 7cm程度のところは面状となる皮膚変色群 1個

  iv)iii)の下方 (左端部は 6cm程度の間隔、右端部は iii)と重複) に左右経
   20cm (蒼白帯の巾は 1.5cmないし 1cm程度、上下の変色部の巾は 1ないし 0.5
   cm程度) の線状皮膚変色 1個
    なお、本創の中央部から右下方に向かって蒼白帯 2cm程度、変色部の巾 1
    〜0.7cm程度で、やや斑点状のほぼ同様な二重条痕様皮膚変色が付属してい
    る。

   v)iii)の下方 7cm程度のところを上縁として、左右経 15cm、蒼白帯の巾 1.2
   〜1cm程度で、上下の変色部が 1〜0.5cm程度の二重粂痕様皮膚変色 1個。

  vi)iii)からv)の右端部に上下方向に向かう蒼白帯の巾が 1.5ないし 2cm
   程度、変色部の巾が 1ないし 0.5cm程度の二重粂痕様皮膚変色 1個

  vii)vi)の下3分の1の外側縁から右やや下方に向かう付写真に示すような、
   中央に蒼白帯がやや不規則に存在する前後経 7cm、上下経 4.5cm大 (変色部
   の上縁の巾は 1cm、内側端の巾は 1cmで、外側やや下半は色調が弱くなって
   いる) の線状皮膚変色 1個

  viii)腰部上端部、v)の下方 7cm程度のところに、右わずかに下方に向かう柳
    葉状の、左右経 11cm、左側端の巾が 2cm大の線状皮膚変色 1個

  ix)腰部左側上端に、前創とはぼ同様な二重条痕様皮膚変色 1個
   蒼白帯の巾は 2cm程度、変色の巾は 1〜0.5cm程度で、内側端は 0.2cm程度
   の線状変色で連続している。

  これら皮膚変色群の色調は、vi)、viii)、vii)の外半部を除き紫赤色であり、
  その他の部は淡紫赤色ないし微紫赤色で、とくにviii) は中央部の蒼白帯もかなり
  不明瞭である。
  内部では、付写真に示すように、左右経 30cm、上下経 40cm大程度の範囲で、
  厚層の皮下および筋肉内出血がみられるが、底部骨には骨折はみられない。

(13)背部左側から腰部にかけて、種々の方向に向かう 1×0.1cm大以下の線状表皮
    剥脱群 1個

(14)左上腕背側上半部に、上下経 8cm、左右経 6cm大の、中央部は色調が濃く、周
   辺部はやや弱く斑状の紫赤色の皮膚変色 1個
   本創は、上腕を背部と接着すると (12) の i) とはぼ連続する。
    また、本創の上方、上腕部の付け根に 4×3cm大程度のほぼ同様な皮膚変色 1
    個を伴っている。

(15)右上腕背側から同外肘部にかけて、上下経 24cm、左右経 13〜9cm大の紫赤
   色の斑状皮膚変色 1個
   同部の一部に 1.5cm程度の蒼白帯と思われるものが、前下方に向かってみられ
   る。

C.胸部の創傷

(16)左鎖骨部から肩峰部にかけて、次の創傷群がみられる。
  i)鎖骨外半郡上端に位置する皮膚に 6×0.5cm大の一部に皮膚変色を伴う表皮
   剥脱 (赤褐色) 1個

  ii)肩甲部に巾 5mm程度の、上下方向に平行する 2×0.1cm大の線状皮膚変色 (
    紫褐色)群 1個
    同部の中央部は、2.5×1cm大の範囲にわたって、微紫赤色の皮膚変色が重
    なっている。

(17)肋骨骨折
   体の前側において、左第 8肋骨は左前正中線の左方 14cmのところで完全骨折
    している。
    この部の皮膚表面には変色や腫脹はみられない。

(18)右肺下葉外側面に 4×3.5cm大の漿膜の粗造化部がみられ、その周囲の漿膜下
    に出血が生じている。
    原因は、おそらく肋骨部の強圧によって生じたものと考えられる。

D.上肢の創傷

(19)左前腕 (一部上腕を含む) 外前側に上下経 33cm、左右経 12〜6cm大の皮膚
    変色 (淡紫赤色、一部微青色) 1個
    なお、下端部では約 2cmの間隔を置いて、5×5cm大の同様の変色が小指側に
    付属している。
    この部の皮下にほぼ同大、やや厚層の出血がみられる。

(20)左手背母指および示指背面に 3×1.5cm、2.5×3cm大の一部に 1×0.6cm大
    以下の表皮剥脱を伴う皮膚変色 (淡紫赤色) 群 1個 

(21)右上腕上端部に、8×5cm大で、中央部に 0.5×0.3cm大の表皮剥脱を伴う皮
   膚変色 (紫赤色) 1個
   この部の皮下にほぼ同大、やや薄層の出血がみられる。

(22)右上腕外側 (一部前後側を含む) から同前腕外側にかけて、上下経 43cm、前
   後径 20〜4cm大の皮膚変色 (紫青色、暗紫赤色) 1個
   同部の色調は、外肘部で最も濃く、外肘部の直上方で巾 1.5cm程度の蒼白帯を
   もつ二重粂痕的形態の部分もみられる。また、一部に粟粒大程度の小表皮剥脱数
   個が散在している。
    この部の皮下にほぼ同大、やや薄層の出血がみられる。

E.下肢の創傷

(23)左下腿前側に、前後経 17cm、左右経 13cm大の斑状皮膚変色 (淡紫赤色) 1個
   下端部には 0.8×0.3cm大の表皮剥脱を伴っている。
   この部の皮下に薄層の出血がみられる。

(24)右膝部周辺に、上下経 13cm、左右経 10cm大の範囲に、斑状皮膚変色 (徽紫
   赤色) 1個
   同部の中央部には、1.2×0.7cm大以下の表皮剥脱群を伴っている。
   本創は全体として、生活反応が極めて弱い。

3.凶器の種類とその用法について

   外傷性くも膜下出血が生じた原因は、頭部の激しい前後方向の振動が打撲によ
  って生じたものと考えられ、その原因となる打撲傷群は、下顎の打撲傷 ((9)創)
  と後頭部の打撲傷 ((1)、(2)創) が主なものと判定される。
   そして、(3) 創と (9) 創は手拳での殴打の可能性が高く、 (1) 創、 (2)
  創は路面での転倒時の打撲の可能性が高い。
   出血性ショックを生じさせた主な原因である背部の打撲傷群 ((12)創) は、そ
  の創傷形態からみると、丸い棒状の鈍器 (バット様のもの) で 10数回打撲され
  たものと判定される。
   なお、後頚部の (3) 創は同様の先端部で生じた可能性もある。


             鑑  定  主  文

      以上の解剖検査記録および説明によって、つぎのように鑑定する。

1.死 因
   本屍の死因は、外傷性くも膜下出血と出血性ショックの共合と判定される。
   そして、その原因は頭部 (顔面を含めて) と背部を主とする全身の打撲傷群で
   ある。

2.創傷の部位、程度
 A.頭部、顔面および頚部の創傷
 (1)後頭部中央の打撲傷   〔これ自体はやや軽傷であるが、(11)創の原因傷〕
 (2)後頭左側の小擦過打撲傷        〔        〃            〕
 (3)後頸部左側寄りの打撲傷         〔        〃            〕
 (4) 後頚部右側寄りの小擦過傷                     〔極めて軽傷〕
 (5) 左側頭部の小擦過傷                           〔  〃  〕
 (6) 左耳介背面の擦過打撲傷                        〔  〃  〕
 (7) 前頭から前額にかけての小擦過傷群                 〔  〃  〕
 (8)左頬の擦過打撲傷                           〔やや重傷〕
 (9)左下顎縁の打撲傷                        〔(11)創の原因傷〕
 (10) 顔面右側の死戦期に生じたと思われる擦過傷
B.背部および上肢背側の創傷
 (11)頭蓋内損傷                              〔致 命 傷〕
 (12)背部ほぼ全体の二重粂痕的打撲傷群                〔重  傷〕
 (13)背部左側から腰部にかけての小擦過傷群           〔極めて軽傷〕
 (14)左上腕背側上半の打撲傷                〔単独ではやや軽傷〕
 (15)右上腕背側から同外肘部にかけての打撲傷群    〔単独ではやや軽傷〕
C.胸部の創傷
 (16)左鎖骨部付近の擦過打撲傷                      〔軽  傷〕
 (17)左第 8肋骨骨折                              〔重  傷〕
 (18)右肺損傷                                 〔  〃  〕
D.上肢の創傷
 (19)左前腕の打撲傷                      〔単独ではやや軽傷〕
 (20)左手背の擦過打撲傷                      〔   〃    〕
 (21)右上腕の小打撲傷                        〔   〃    〕
 ( 22) 右上腕から同前腕外側にかけての打撲傷          〔   〃    〕
E・下肢の創傷
 (23)左下腿前面の打撲傷                          〔軽  傷〕
 (24)右膝の死戦期の創傷

3.成傷器の種類とその用法
   本屍の背部の二重条痕的打撲傷群は、バット様の丸い棒状のもので 10数回打
   撲して生じたものと判定される。
   また、後頭部などの (3) 創も同一凶器で生じた可能性もあり、左右上腕など
   の打撲もその可能性がある。
   ただ、後頭部の (1) (2) 創などは、路面での打撲の可能性が高い。

4.血液型
本屍の血液型は A・DccEE型である。
                               以 上
本鑑定は平成11年5月14日から同年10月1日までである。
平成11年10月1日
             埼玉県入間耶毛呂山町毛呂本郷38
              埼玉医科大学法医学教室
               鑑定人 ■■■■■■
               鑑定人 ■■■■■■

警察はなぜ鑑定項目から、『 死後経過時間 』 を外したのでしょう?
『真皮に達する表皮剥脱』に
この部の皮膚にほとんど出血がない。
とあります。
生きている時に真皮に達する傷ができたら、出血して当たり前だと思うのです。
生活反応が極めて弱い。あまり生活反応が無い。
私には、『 死ぬまで暴行を受けていた。』 『 死後まで暴力を振るわれていた。』 としか思えないのです。